骨粗鬆症と骨折
高齢者が骨折しやすいのは骨粗鬆症によって骨の強度が低下することと、筋力の低下やバランスの悪化によって転倒しやすくなることが原因です。
骨の強度は骨密度だけによって決まると思われがちですが、最近骨質の重要性が注目されています。骨は鉄筋コンクリートに例えられますが、コンクリートに当たるのが骨塩(カルシウム)であり、鉄筋に当たるのがコラーゲンです。骨塩量が減ることだけでなく、コラーゲンの質が低下することによっても骨の強度は低下します。骨粗鬆症の検査は骨密度測定だけでなく、血液・尿検査でコラーゲンの劣化はないか検査を受けましょう。
食生活では、カルシウムとタンパク質を十分にとり、アルコールやカフェイン飲料のとりすぎやタバコは止めましょう。薬剤は骨密度をあげるものだけでなく、骨密度改善のためにはビタミンDとビタミンKを、骨質改善のためにはビタミンB群と葉酸を併用しましょう。ビタミンDは日光を浴びることで体内でも作られます。1日30分程度、冬であれば日光を浴びて散歩を、夏であれば木陰で過ごす程度で十分です。美容のために過度の紫外線対策をしている人は注意が必要です。
運動で筋力やバランスをとる能力を鍛えましょう。骨は力を加えるとわずかですが撓みます。宇宙旅行や寝たきりなどで、この撓み量が少なくなると骨塩量は減少し、スポーツを行うなど撓み量が増えると骨塩量は増加します。このように運動は転倒防止という点からも骨粗鬆症の防止という点からも骨折の予防に有効です。高齢になると室内に閉じこもりがちです。積極的に屋外に出かけましょう。
(福島県立医科大学 外傷学講座教授 松下 隆 先生)